化学物質過敏症(シックハウス症候群) SBS(Sick Building Syndrome)

化学物質過敏症

ごく微量の化学物質に対して過敏に反応してしまう症状を化学物質過敏症と言います。化学物質過敏症患者の約8割が、自宅の新築、リフォーム、新築のマンション内の有機化合物によって発症しているといわれます。塗料や壁紙の接着剤に含まれた有機化合物がいっせいに放出されるためです。目の痛み・頭痛・吐き気・アトピー性皮膚炎・身体疲労・ストレス・情緒不安定・筋肉痛・関節痛・のどの痛み・微熱・下痢・不眠・などが症状として挙げられます。

室内を汚染する化学物質とは

室内を汚染する化学物質は沸点で分類すると、粒子状有機物(POM),準揮発性有機化合物(SVOC)、揮発性有機化合物(VOC)、高揮発性有機化合(VVOC)、に分けられます。これらを総合して、総VOC(TVOC)と呼んでいます。これらの化学物質は外気にも微量に含まれていますが新築住宅やリフォームした住宅には二桁~三桁高い濃度が測定されることもあるそうです。
室内空気中有機化合物の分類と沸点、化合物の例
沸点は日本化学会編:化学便覧(基礎編)

有機汚染物質の分類
有機化合物の例(WHOによる)
( )内は沸点(℃)
粒子状有機物
(POM)
ベンツa-ピレン
PCB
準揮発性有機化合物(SVOC)フタール酸ジオクチル(390)
フタル酸ジブチル(340)
チアベンダゾール
クロロpリフォス
リン酸トリプチル(290)
揮発性有機化合物(VOC) ニコチン(247)
トリデカン(235)
p-ジクロロベンゼン(186)
リモネン(178)
デカン(174)
キシレン(140)
ブタノール(117)
トリクロロエチレン(113)
トルエン(110)
メチルエチルケトン(80)
ベンゼン(80)
エタノール(78)
酢酸エチル(77)
n-ヘキサン(69)
ジクロロメタン(40)
ベンタン(36)
室内温度23℃
高揮発性有機化合物(VVOC)アセトアルデヒド(20)
メチルメルカブタン(8)
ブタン(-0.5)
メチルアミン(-0.6)
塩化ビニルモノマ(-14)
ホルムアルデヒド(-21)
フロン12(-30)
アセチレン(-84)
エチレン(-100)
メタン(-161)

ホルムアルデヒド

ホルムアルデヒドは国際癌研究機関(IARC)や米国産業専門家会談において「ヒトに対する発ガン性が疑われる物質」とされており、アレルギーの原因物質との説もあリます。

ホルムアルデヒドを含む可能性のある建材は接着剤、合板、塗料、パーティクルボード、化粧合板集成材、断熱材(押し出し発砲ポリスチレン、硬質ウレタンフォーム、高発泡ポリエチレン)、フローリング材、ビニールクロスなど多くの建材が対象となり、開放型ストーブ(煙突が外部につながっていないストーブ)、湯沸し器からも発生します。

ホルムアルデヒド濃度とその影響

濃度(ppm)ヒトに対する影響
0.01結膜の中程度の影響
0.03~0.05中程度の眼の刺激
0.05~0.06臭気を感じる(50%の割合)
0.16~0.45眼、鼻、咽喉の灼熱間、刺痛、頭痛
0.2419%の割合で軽度の不快感、結膜刺激、鼻や咽喉の乾燥感
0.4131%の割合で軽度の不快感、結膜刺激
0.8194%の割合で軽度の不快感、結膜刺激、鼻や咽喉の乾燥感

個人差にもよりますが自宅の新築、リフォームにより放出された化学物質が、その人の許容量を超えて体内に蓄積されることによりさまざまな症状が引き起こされます。アレルギー体質の人や家の中で過ごす時間が長い女性ほど発症しやすいといえます。又、几帳面、掃除をよくする人もなりやすいといわれています。女性の方は症状が良く似ていることから更年期障害と間違われて診断されることもあるようです。場所が変わりその症状が改善するようであれば化学物質過敏症の疑いも考えられます。

厚生労働省は平成9年6月にホルムアルデヒドについて室内濃度指針値を提案し、濃度指針値として0.1mg/立方メートル(0.08ppm)と発表しました。この値は目標値であり規制を定めたものではなく、したがってこの濃度を超える建物を創っても法的に処罰されるものではありません

なってしまうと日々の生活に制約が多い

化学物質過敏症になった五十代の主婦の生活
この方は4年前に自宅をリフォームし身体に変調をきたし化学物質過敏症と診断されました。そこで家の中のホルムアルデヒドの濃度を測定したところすべての場所で厚生省の室内濃度指針値である0.08ppmを超えていたそうです。そして、ご主人の協力のもといろいろな対策を施しなんとか家の中での生活は出来るようになったそうです。しかし絶えずいろんなモノ(化学物質の臭い)に対して神経を使っています。

化学物質過敏症になると機械では検地できないような微量の化学物質の臭いまで反応し、すごい人は薬品名までわかるそうです。

家の中ではなんとか生活できるが外ではつらい

化学物質過敏症患者は自宅の対策で家の中ではなんとか生活できても外での活動は制約を受けます。この主婦の方は電車、スーパーマーケット、など大勢の人がいるところでは、多種の化学物質が存在し、その臭いに反応するため生活の場がわずかな範囲に限定されます。外出は、車のシートから発生する化学物質を活性炭シートに吸着させる対策を施したご主人の車しか乗れません。又、美容院では沢山の溶剤が置いてありそれらの臭いにも反応するため自宅に来てもらって髪を切る、など化学物質過敏症を発症すると健康な人と同じ生活が出来ず、疎外感から落ち込んだり別の病気につながる可能性もあります。

化学物質過敏症にならない為にはどうすればよいのでしょうか

自宅の新築、リフォームをおこなった場合、すぐに入居せずに約1ヶ月位できるだけ期間をあけて化学物質が十分発散し濃度が低くなってから入居することです。ホルムアルデヒドは10ppmが2週間で0.01ppmと厚生省のガイドライン値(0.08ppm)の約100倍もの濃度が2週間でガイドライン値以下に下がるといった実験結果もあります。その間も室内の空気は汚染され続けているわけで窓をあけて空気の入れ替えをし、濃度を下げる事が大切です。

建設省の官民共同研究事業「健康的な居住環境形成技術の開発」の対策・実験ワーキンググループ(主査・野崎淳夫東北文化学園大学助教授)が行ったベイクアウトの実験によれば「ベイクアウトは有害物質の減少に有効」と結果報告されています。野崎主査は「ベイクアウトは欧米では習慣として行われているが日本ではほとんどやらない。理想は有害物質を出さない建材や接着剤を使うことだが、なかなか難しい。身近な対策として有効だ。」と話しています。

ベイクアウトは室温をある一定期間、一時的に上昇させることで化学物質の発生を増大させ、平常時の発生量を緩和するものと定義されています。

ベイクアウトの方法として、1)建具のソリを避けるためには温度は上げすぎない、2)扇風機で温度を一様にする、3)すすが出ない電気ストーブを使う、4)加湿器を併用する、5)一回半日以上、一定日数繰り返す。としており、実験では締め切った部屋で電気ストーブを使い、7時間にわたり35度を保った後、1時間換気というサイクルを9回繰り返し又、ホルムアルデヒドの発散を促す加湿を併用した例も行われました。

治療法

化学物質過敏症の治療はアメリカが進んでおり、ダラス環境センターでは患者ごとに影響力のある物質の種類を確かめ、反応するぎりぎりの量を注射し過敏な反応を抑える中和療法、化学物質は体内の脂肪組織に蓄積されやすいため運動をして燃焼させる運動療法、サウナで汗といっしょに排出させる温熱療法などが行われています。
これらの治療は化学物質を排除したクリーンルームで行われています。

転地療法

空気のきれいな地方に移って化学物質のない環境で生活する治療法

国内では北海道旭川市に日本で初めての化学物質過敏症患者のための専用住宅が建てられています。この住宅は旭川市と地元の医科大学、住宅メーカーが協力し40年間農薬を散布してない土地に立てられ、室内の化学物質を減らすための工夫がされています。内装には壁紙や合板を一切使用せず地元で製材された木材を使用したり、木材を固定するには接着剤を使用せず釘や木材を組み合わせる方法がとられています。今後全国に数カ所このような住宅が立てられる予定です。

化学物質過敏症についての相談は保険所でも応じてくれます。又、ホルムアルデヒドの濃度を測定してくれる保健所もあります。

TVOCの濃度と健康への影響(メルハブ;デンマーク)

TVOC(mg/立方メートル)ヒトに対する影響
0.2以下影響がないと考えられる。快適な範囲
0.2~0.3影響の可能性はかなり低い。
0.3~3相乗作用があれば炎症や不快感が生じる可能性あり。
3~5居住者からの苦情が起こり、必ず臭う。
5~8生理的な影響が見られ、眼、鼻、喉の炎症が起こる。
8~25 頭痛が起こる可能性がある。
25以上頭痛が起こり神経毒性が問題になる。

以上、TV、資料を基にまとめてみました。